PROJECT 03 電界通信の製品化および新たなシステム開発プロジェクト

PROFILE

N.T
ソリューション事業本部
デジタル・イノベーション事業部
2007年入社/工学研究科 電気電子情報工学専攻卒

大学院時代は、コンピュータを用いて「イオンの状態から人間の心臓の動きを読み取る計算プログラム」の研究に没頭する。研究室の教授の紹介でアドソル日進に入社。入社後は2ヶ月間の研修を終えた後、現部署に配属となり、先輩のもと家電の研究に用いるためのプログラムの開発に携わる。その後、現プロジェクトに参加。電界通信技術のキーマンとして活躍している。

「電界通信」という名の、
前例のない挑戦を世の中へ。

アドソル日進が開発した独自の最先端技術の一つである電界通信技術。この技術は人体通信技術とも呼ばれ、「タッチタグ」を携帯した人がリーダに触れることで人体の表面の電界が変化し、タグと送受信機の間でデジタル信号の送信/受信ができる技術。当社ではさらなる進化に力を入れ、ハンズフリーID認証を始め、今後様々な機器との組み合わせにより大きな可能性を秘めるこの技術を、プロジェクトを組んで生み出している。

このプロジェクトの
始まった背景を
教えてください。

SUICAやPASMOといったICカードは知っていますよね?あれは近距離無線と言われ、ICカードとそのリーダが近い距離にある時に反応し、データの送信/受信を行います。それに対し、私たちの開発したタッチタグはポケットの中でもいいので人が身につけてさえいれば、たとえばリーダに手を触れるだけで人体の表面の電界の変化を読み取り、反応するのです。空気中を伝わる無線とは違い、通信するエリアが極一部に限定されるため、セキュリティ上のメリットもあり、既存の入退室管理システムと組み合わせれば、社員証を首からかけた状態のまま身体の動き一つで鍵が開きます。こうした技術はまだ世の中になく、様々なセキュリティが厳しくなる中、新しいID認証の仕組みとして広まる可能性があるのではと当社では考えています。さらに、この電界通信は手袋や靴を介しても認証可能です。その点を評価され、衛生面の管理に厳しく、消毒した手袋の着用が義務付けられている一部の食品工場の入退室にも利用が決まっています。そして、この最先端技術を生みだし、もっと幅広く世の中に役立てるために、このプロジェクトは生まれたのです。

このプロジェクトに
参加が決まった時の気持ち、
その後の役割は?

実は、最初は電界通信の実験台として参加しました。当時はまだ研究段階で、その中でもとくにリーダと呼ばれる読み取り機のハード性能を調べている時期でした。ある日、実験を担当している先輩社員から電界通信のリーダを座面に埋め込まれたイスを渡され、「そのイスに毎日座ってデータを取ってくれないか?」と言われました。何でも、リーダの耐久性を調べたかったようなのですが、離着席の度に電界通信が反応するため私の行動が丸わかりになるわけです。最初は、少し嫌でしたね。ただ、私も技術者ですので実験台になりながらも「へえ、こんな技術があるんだ」と興味が増していき、「まだ世の中にないものを自分も一緒に生み出してみたい」と思うようになっていました。そして、気づくとデータ収集の手伝いから試作機づくり、ソフトウエア開発、ハード開発…と任されるようになり、今ではこの電界通信の製品およびシステム全体の設計・開発を担当しています。

プロジェクトを進めるうえで
苦労した点、
うれしかった瞬間は?

「通信」するところから試行錯誤する必要があったことです。たとえば、無線やBluetoothの機器などを開発する際、通信の部分は通信機能を持っているチップを買ってきて基盤に組み込めば形になります。そして、「通信が可能だから、こんなアプリケーションを作りましょう」と提案できるのですが、電界通信の場合は通信する部分から自分たちで作らなければなりませんでした。しかも、ハードウエアとソフトウエアの両面からアプローチする必要があったので、広い視野が求められたと同時にやらなければならないことも山積みだったのです。プロジェクトメンバーで集まっては仮説を立ててすぐ試し、パターンを変えてはすぐ実験を繰り返しました。前例がない挑戦だったので、壁にぶつかってはやり直しの連続ですよね。それでも諦めず研究を重ねた結果、電界通信時の符号化に自分の提案したロジックが採用され、通信性能が向上した時は本当にうれしかった瞬間です。ようやく技術者としてプロジェクトに貢献できた気がしましたね。

このプロジェクトの未来、
あなた自身の今後の目標を
教えてください。

電界通信はアドソル日進の独自のソリューションの一つとして製品化にこぎつけました。さらに、この最先端技術を実際に使ってくださるお客様も出始めました。導入後にお客様と一緒に動作確認をした際の、お客様の「おお」という驚きのリアクションを間近で見られたことは技術者冥利です。しかし、まだまだ始まったばかり。もっと電界通信技術を普及させ、自分の関わった製品やシステムを街中で見かけることができるくらいの規模まで成長させたいと思います。そのためにも、自分自身が「電界通信技術のキーマン」として、もっと世の中に知れ渡り、実力も人脈も増やしていく必要があると思います。

アドソル日進の、
ここが魅力!
社員全員が自分の成長につながるテーマを掲げ、チャレンジする意識を持って仕事をする雰囲気があります。さらに、会社としても現状に満足することなく、成長していこうという意志を感じることができます。例えば、今回の電界通信タッチタグも会社としてユニークな製品を作ろうという一つのチャレンジだったと思います。大企業だから安心という時代ではありません。社員一人ひとりがチャレンジし、成長し続ける環境こそ技術者にとって働きやすい環境だと思います。そして、私にとってそれがアドソル日進です。